「持ち家vs賃貸」が語られるとき必ず出てくるのが、「今後は日本全体の人口が減っていくから、質の高い賃貸住宅が格安の家賃で現れるはず」という説。確かに人口が減少している日本では充分にイメージできる予想です(ただ、質の高い賃貸を格安で借りられるのはいったいいつのことなのか……という疑問を感じますが、それは別の機会に)
もしこの予想が現実になったとすると、未来の日本では家を購入する人は激減し、賃貸住宅に住む人がさらに増えるということになります。そこで気をつけたいのが、「事故物件」の存在です。
今回は、来るべき人口減少に向けて知っておきたい事故物件を見抜く方法を紹介します!
目次
そもそも事故物件とは?
事故物件には、主に以下の4つがあります。
「心理的瑕疵」のある物件
一言でいえば、人の死に関わる事件や事故があった物件を指します。簡単にいえば、自殺や他殺、心中や自然死があった家です。これから増えていくことが予想される、孤独死があった物件もこれに当てはまることがあります。
「物理的瑕疵」のある物件
物理的な欠陥がある物件を指します。雨漏りやシロアリ被害、耐震強度不足などがこれにあたります。
「環境的瑕疵」のある物件
建物や土地そのものに問題がないものの、環境に問題がある物件を指します。近隣に騒音や異臭を出す住民がいるケースや非社会的団体の事務所があるケースです。日照権トラブルに巻き込まれている家などもこれにあたるでしょう。
「法律的瑕疵」のある物件
個人的には事故物件といっていいのか疑問ですが、法律による制限がかけられている物件もあります。文化財の指定地域に含まれている物件などがこれにあたりますが、賃貸を借りて住む側にはあまり関係ないのではないでしょうか。
事故物件を見抜く方法
事故物件にうっかり住んでしまわないようにするには、どうすればいいのでしょうか。
「告知事項有り」には要注意!
「告知事項有り」とは、「住宅を貸す側が借りる側に告知しなければいけない重要事項がありますよ」という意味。上に紹介したような瑕疵がある場合、必ず事前に告知したうえで契約を結ばなければなりません。万一これを怠った場合、宅建業法47条1項1条に違反することになりますから、基本的には間違いなく告知されるはずです。
ただし、増加の一途をたどっている孤独死の場合、必ずしも告知されるとは限りません。一般的に自然死は告知不要とされているからです。そうとはいえ、死後の発見が遅れて腐敗してしまっていた場合などは告知義務が発生する場合があります。
事故物件を隠す“物件ロンダリング”って!?
家を借りる側の人間が一番気にするのは、心理的瑕疵のある物件ではないでしょうか。自殺や殺人のあった物件にはなるべく住みたくないものです。しかし、不動産業者は家を貸すことで利益を得ています。事故物件は家賃を3~5割程度下げても借り手がつかないこともありますし、事件や事故が原因で住人が契約を解除してしまうことも。こうした事態になれば、不動産業者としては死活問題です。
そこで苦肉の策として採られるのが“物件ロンダリング”という方法です。「マネーロンダリング」という言葉がありますが、そもそも「ロンダリング」とは「洗浄」のこと。実は不動産業界には、「人の死に絡む事故物件の告知義務は、事故後に入居する一人目のみ」という暗黙のルールがあるといいます。誰か一人が入居してしまえば、事件や事故による心理的瑕疵はなくなるという考え方があるからです。つまり、問題となる事件や事故のあとに不動産業者の社員が短期間だけ契約したり、破格に安い価格で一般の人と短期間だけ契約したりすることで、物件を“洗浄”してしまうというわけです。
ただし最近は、こうした事例は減っているといいます。事故後の一人目の入居期間があまりに短かった場合は、事故物件であることを隠蔽したものとしてなんらかの処分が下る可能性があるからです。借り手側にとっては非常に助かりますね。
家賃が相場より安い
家賃の引き下げは、事故物件を抱える業者が採るもっともわかりやすい対応なのではないでしょうか。実際、僕も「2DKで家賃2万数千円」という物件に出会ったことがあります。不動産業者の営業さんと話したら、「あそこはダメなんですよ。家に入っただけでゾッとします」という返事が。この価格はさすがに安すぎだと思いますが、一般的には同エリアの相場より3~5割程度安いことが多いようです。
定期借家である
定期借家とは、あらかじめ定められた一定期間のみで契約が終了する物件のこと。「事故物件の告知義務は事故後に住む一人目のみ」という業界ルールを利用し、一人目には告知したうえで家賃を下げて契約。二人目からは告知せず通常家賃で貸し出すために使われることが多いようです。
部屋の一部だけが不自然にリフォームされている
自殺や他殺によって痛いが放置された場合、床や壁などが著しく損傷することがあります。当然このままでは貸し出すことはできませんから、部分的にリフォームすることで事故物件であることを隠そうとするわけです。また、リフォームされるのは床や壁など一部分だけとは限りません。バスルームやトイレは旧式のものがそのまま使われているのに、ある一部屋だけが最新式に替えられているような物件も注意が必要です。
最近、建物の名前が変わった
大きな事件や事故があった物件は、その名前とともに報道されてしまうことがあります。特に最近はインターネット上に記事が残ってしまうことがありますから、不動産業者としてはこのままにしておくわけにいきません。そこでアパートやマンションの名前を変えて検索に引っかからないようにするわけです。ただし、本当にただ単純に物件のイメージを変えるために名前を変更する場合もありますから、事故物件を見抜くための絶対的なポイントになるとは限りません。
今後の日本で予想されている賃貸物件の低価格化。しかしながら、事故物件と不本意に契約してしまうのは嬉しいことではありません(最近は、あえて事故物件に住むという人もいるそうですが)。どうしても不安であれば、契約する前に近隣住民の方に聞いてみるというのも一つの方法です。悪質な不動産業者は減ってきているようですし、今後生き残れなくなってしまうと思いますが、借り手がある程度の知識をつけておくことは大切だと思います。この記事がその参考になりますように。今回もありがとうございました!