「不動産投資関連の本を30冊読んでみる」というブックマラソンは最初の節目である5冊目を迎えました。(1冊、まだ記事にしていないものがあります)
今回ピックアップしたのは「不動産投資の嘘」です。
なんというキャッチーなタイトルでしょう! 不動産投資関連の本というと、「私はこうして成功した!」という経験ベースの本が多いイメージがあります。そういった本のタイトルを見るたび「すごいな! うらやましいな!」と思う一方で、「本当かな、再現性があるのかな?」と疑う気持ちもありました。
そんな僕としては、「不動産投資の嘘」といタイトルは、是が非でも読むべき本のように思えました。
実際、読んでみて大正解でした。不動産投資の世界にどんな嘘があるのか、騙されないためにはどのように考えるべきなのかがよくわかりました。
目次
「不動産投資の嘘」ってどんな本? 内容をざっくりと
「はじめに」にはこう書かれています。
不動産を売る側の業者は、うまい話しかしません。たとえデメリットが目立つ物件だとしても、まるで大儲けできるかのように「嘘」をつくのです。また、セミナーを多数開催していたり、ベストセラーの著者である有名投資家たちも、実は裏で業者とつながっている場合が多く、とにかく投資を進めます。彼らの口車に乗り、安易に投資に乗り出したことで、マイナスしか生み出さない夫妻物件を手にしてしまう人も続出しているのです。
「Yahoo!知恵袋」や「教えて!goo」を見ていても、業者に騙されそうになっている投稿を見たことがあります。ぱっと見て「これはひどいな」と思ったのは、毎月3万円近く(表面利回りの時点でマイナス/管理費や修繕積立を考慮してこの額)の赤字を生み出す新築物件の勧誘を受けている人の相談です。業者は節税や団信保険がメリットということにして、ゴリゴリ営業してくる様子。初心者の僕でも絶対に手を出してはいけない物件だとわかります。
こうした状況で真っ先に考えるのは、「自分が悪徳業者に騙されないためにはどうしたらいいか?」ではないでしょうか。その意味で、この本を読んで本当によかったと思います。
主に書かれているのは、以下の9つの嘘とその解説です。
・融資の嘘
・有名投資家の嘘
・不動産業者の嘘
・立地の嘘
・賃貸経営の嘘
・出口戦略の嘘
・法人化の嘘
・税金対策の嘘
・海外不動産の嘘
どれも不動産投資を少し勉強したら、すぐ疑問に思うことについて書かれています。
「不動産投資の嘘」を読んでわかったこと
こうした内容のなかでも、特に僕が勉強になったと思ったことについて書いてみたいと思います。
不動産業者が、必ずしも融資について詳しいとは限らない
「不動産投資の嘘」は、「融資」についてから解説がはじまります。ここまで読んだ本では物件の話を先に説明するものが多かったので、この構成は新鮮でした。
不動産業者は「××銀行でないと間に合いませんよ」と買い煽り、金利が高い場合には「何年かしてから借り換えればいいんですよ」と強引に話を進めようとすることがあるといいます。実際、僕が読んだブログでも同じように煽られた経験のある人がいました。
ただ、この本によれば、きちんとした不動産業者であればさまざまな提案ができるものなので、それができない不動産業者とは付き合うべきでないといいます。
こうしたことが起こるのは、融資に弱い不動産業者が存在しているから。あるいは、作業量を減らすためにあえて面倒な提案を避ける業者がいるからです。うっかり間に受けて不利なローンを組んでしまわないよう、自分の足で金融機関をまわったり、インターネットや不動産投資家の情報を元に自分に合いそうな金融機関の見当をつけたりすることが大切ですね。
不動産投資は出口で利益を確定する
投資において「出口」を考えておくことは非常に大切です。僕は株式投資をやっていますが、出口が曖昧だったために苦い思いをしたことがあります。
では、不動産投資の出口とはどのようなものでしょうか。この本では、取得から数年後に売却したときのキャピタルゲインまで含めてプラスになるようシナリオを書くことを勧めています。
僕は一度収益を生む不動産を取得したら、特別なことがない限り持ち続けて毎月の家賃収入を得るものだと思っていました。別の本では持ち続ける手法を提案しています。
ところが、この本では売却することを前提に取得するべきだという考え方を取っています。その理由の一つは、安定した収益を得るには他の手法を活用するのも一案だからだということです。不動産は不確定な市場で流動性が低いため、ある程度のお金ができたらファンドや金融商品を利用したほうが高い利回りで安定的に運用できる可能性があるということでしょう。
どちらが絶対的な正解ということはないと思いますが、出口戦略についていろいろと知っておいて損はないと思います。
不動産投資はあくまで投資手段の一つである
第10章の冒頭に、こう書いてあります。
投資家は投資の基本は「RIRE(ファイヤー)」であることを頭に入れてください。ファイヤーというのは、次のような内容となっています。
F…ファイナンス。金融商品など
I…インシュア、保険
RE…リアルエステート。不動産
つまり、自分が投資家としておこなうものを大きくとらえ、「株」「投信」「不動産投資」をあくまでもポートフォリオを組む要素としてとらえるということですね。
この考え方が僕のなかではっきりしただけでも、この本を読んだ意味があったと思います。
「不動産投資の嘘」を読んでわかりづらかったこと
この本は、いわゆる初心者向けの本ではありません(もちろん、初心者が読んでも非常に勉強になります)。ですから、少し難しいところが何か所かありました。
特にわからなかったのは、リフォームに対する費用対効果を考える件です。ここでは、お金を投資してリフォームすべきか、それともリフォームに効果はないと判断しお金を投下しないでおくべきかをシミュレートします。そのなかでお金の計算が出てくるのですが、説明が言葉足らずで理解するまでに非常に苦労しました(実はいまも、どうしてそうなるのかわからない式があります笑)。
もっとも、これは著者である大村氏の責任というより、一緒に書籍をつくった編集者の責任ですね。プロにとっては当たり前の計算も素人にはわかりづらいということをしっかり指摘し、原稿の修正を依頼すべきでした。
著者の大村昌慶氏ってどんな人?
大村昌慶氏は、横浜に本社がある株式会社ダイムラーコーポレーションの代表取締役です。ダイムラーコーポレーションは、投資物件の仲介や賃貸管理のコンサルティングをおこなう会社。大村氏は、自らも投資家として資産を運用しています。CPM(米国不動産経営管理士)、CPM(米国認定不動産投資顧問)、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士など数々の資格を持っている、不動産のプロです。
インターネット情報によれば、非常に頭がキレる反面、非常に温和であるとのこと。ただ、写真を見る限り「数々の修羅場を潜り抜けてきた方」という印象を受けます。偶然にもうちのそばに会社があるようなので、いつかどこかですれ違ってみたいです笑
「不動産投資の嘘」を読んだ感想 まとめ
・出口までしっかり考えてから投資することの大切さを教えてくれたのは非常にありがたい
・不動産投資を数ある投資の一つと位置付けている本はあまりないので新鮮だった(少なくとも、ここまではっきり書かれている本は読んでいない)
・非常に収穫の多い本だが、初心者にはやや難しい
・この本を読んで「これ、自分にはできない」と思ってしまう人は多いと思う
「不動産投資ってすごいよ! 儲かるよ!」ということだけでなく、リスクや危険性とその対策までしっかり書いてくれていて、非常にいい本でした。不動産投資はレバレッジをかけられることや強制ロスカットがないことなどの魅力がありますが、本来であれば自分の手には負えないようなお金を動かすことになります。有名投資家の武勇伝や成功体験を鵜呑みにするのではなく、手堅く慎重にやっていきたいと考える僕には、非常に参考になる本でした。